
パルプ・製紙製造工場での仕事に興味はあるものの、「体力的にはどうなの?」「環境が過酷って本当?」と不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、製紙業界の具体的な仕事内容や、働く上でのメリット・デメリット、向いている人の特徴を詳しく解説します。自分に合った職場選びの参考にしてください。
パルプ・製紙製造工場の仕事内容とは?
パルプ・製紙製造工場は、私たちの生活に欠かせない「紙」を一から作り出すダイナミックな現場です。
一口に紙と言っても、新聞紙や段ボール、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、コピー用紙、食品パッケージなど、その種類は多岐にわたります。
工場では巨大な機械を24時間体制で動かし、原料から製品までを一貫して製造しています。ここでは、主な工程と具体的な作業内容を深掘りしていきましょう。
原料の調達とチップの製造工程
製紙の第一歩は、原料となる木材の確保と加工です。国内外から運ばれてきた丸太や木材チップの管理から始まります。
丸太の場合は、まず「ドラムバーカー」と呼ばれる巨大な回転機械で皮を剥ぎ、その後「チッパー」で細かく砕いて数センチ程度のチップ状にします。
この工程での仕事は、主に重機を操作して木材を運搬する作業や、機械の運転監視です。
また、近年では環境保護の観点から「古紙リサイクル」が非常に重要視されています。
回収された新聞や雑誌、段ボールを水と薬品で溶かし、インクや不純物を取り除いて「古紙パルプ」にする工程も、原料部門の重要な役割です。
古紙の中に混じっているビニールやホチキスの針などを取り除く作業は、製品の品質に直結するため、非常に緻密な管理が求められます。
パルプの製造(蒸解・漂白)工程
チップ状になった木材を「パルプ(繊維)」へと加工する工程です。巨大な圧力釜(蒸解釜)の中にチップと化学薬品を入れ、高温・高圧で煮ることで、木材から繊維成分(セルロース)を取り出します。
これを「蒸解」と呼びます。
取り出された繊維はそのままでは茶褐色(クラフト色)をしているため、用途に合わせて薬品で白くする「漂白」作業が行われます。
この工程の主役は「中央監視室」でのオペレーションです。
コンピューターのモニターを監視しながら、温度、圧力、薬品の濃度を調整します。
化学反応を扱うため、理系的な知識が活かされる場面も多いですが、未経験からでもマニュアルに沿って段階的に覚えることができます。
設備の定期的なパトロールや、サンプリングによる品質チェックも欠かせない仕事です。
抄紙(かみすき)工程
パルプを薄く平らに広げ、乾燥させて紙にするのが「抄紙(しょうし)」工程です。
ここには、長さが100メートル以上、高さも数階建てのビルに匹敵する「抄紙機」という巨大な機械が設置されています。
まず、水に溶かしたパルプ(濃度1パーセント以下)を高速で回転する網の上に薄く広げます。その後、プレス機で水分を絞り、巨大な熱シリンダーで乾燥させていきます。
オペレーターの仕事は、この抄紙機の安定稼働を維持することです。紙の厚さや水分量が一定に保たれているか、破れ(断紙)が発生していないかを厳重に監視します。
もし紙が破れた場合は、猛スピードで回転する機械から紙を取り除き、再び通し直す作業が発生します。
この「紙通し」は、チームの連携とスピードが試される、製紙工場で最も活気があり、かつ緊張感のある瞬間です。
仕上げ・加工・検品工程
抄紙機から出てきた巨大な紙のロール(ジャンボロール)を、顧客の要望に合わせてカットしたり、表面に特別なコーティングを施したりする工程です。
段ボール用であれば複数の紙を貼り合わせる作業、ティッシュ用であれば使いやすいサイズへの裁断や箱詰めが行われます。
ここでは、製品に汚れやシワ、穴がないかを確認する検品作業や、自動包装機による梱包、パレットへの積み込みが主な仕事となります。
フォークリフトによる運搬作業も非常に多く、免許を持っている人は即戦力として重宝されます。
最終的な品質を保証するセクションであるため、丁寧な作業が求められます。
設備保守・メンテナンス部門
製紙工場は一度稼働を始めると、数ヶ月間止まることなく動き続けます。そのため、機械の故障は甚大な損失を招きます。設備保守部門は、機械の「主治医」のような存在です。
・ベアリングの異音チェックや交換
・オイルの補充と管理
・モーターや電気系統の点検
・配管の漏れチェック
これらを定期的なシャットダウンメンテナンス(計画休止)や、日常の巡回点検を通じて行います。機械いじりが好きな方や、電気・機械の知識がある方にとっては、非常にやりがいのある職種です。
パルプ・製紙製造工場が「きつい」と言われる理由
ネット上の口コミや評判で「製紙工場はきつい」と言われるのには、いくつかの明確な理由があります。
入社後のミスマッチを防ぐためにも、その実態を詳しく知っておきましょう。
高温多湿な作業環境
紙を製造する工程では、大量の熱と水を使用します。
特に抄紙機の乾燥工程(ドライヤーパート)では、100度以上の熱を持った巨大な金属シリンダーが何十本も並んでいます。
そのため、工場内の温度は夏場になると40度を超えることも珍しくありません。湿気も非常に高いため、サウナの中にいるような感覚になることもあります。
もちろん、スポットクーラーの設置や休憩時間の確保、スポーツドリンクの支給など、各メーカーは熱中症対策に心血を注いでいますが、暑さに極端に弱い人にとっては厳しい環境と言えます。
工場特有の臭い(硫黄臭)
パルプを製造する際の「蒸解」工程では、木材の成分と薬品が反応し、独特の臭いが発生します。
多くの人が「茹でた卵のような臭い」や「硫黄のような臭い」と表現します。近年は脱臭装置の技術が向上し、工場外へ漏れる臭いは大幅にカットされていますが、工場内部では依然としてこの臭いを感じる場所があります。
最初は戸惑うかもしれませんが、多くの従業員は「数週間もすれば鼻が慣れて全く気にならなくなる」と言います。
交代制勤務による生活リズムの調整
製紙工場は24時間稼働を基本とするため、勤務形態は「3交代制」や「4組3交代制」が一般的です。例えば、以下のようなシフトです。
・1直(朝勤):7:00〜15:00
・2直(夕勤):15:00〜23:00
・3直(夜勤):23:00〜7:00
このように、一週間ごとに勤務時間が変わるため、睡眠リズムを整えるのが難しいと感じる人もいます。
また、ゴールデンウィークや盆、正月といった世間の休日も関係なく稼働するため、家族や友人と予定が合わせにくいという側面もあります。
しかし、その分「平日休み」のメリットを享受できるため、人によって評価が分かれるポイントです。
体力的な負担と騒音
オートメーション化が進んでいるとはいえ、清掃作業や原料の投入、トラブル時の復旧作業などでは相応の体力を消耗します。
また、巨大な機械が常に高速回転しているため、現場はかなりの騒音に包まれています。
作業中は耳栓を着用することが義務付けられている工場も多く、大きな音にストレスを感じる人には不向きかもしれません。
パルプ・製紙製造工場で働くメリット
「きつい」面が強調されがちですが、製紙業界にはそれを上回るほどの魅力や安定性があります。
長く働き続ける人が多いのも、以下のようなメリットがあるからです。
業界の安定性と将来性
「ペーパーレス化」と言われて久しいですが、紙の需要がなくなることはありません。
確かに新聞や雑誌の部数は減っていますが、一方でネット通販(ECサイト)の普及により、配送に欠かせない「段ボール」の需要は右肩上がりです。
また、ティッシュやトイレットペーパーといった衛生用品は、景気に左右されない不滅の需要があります。
さらに、脱プラスチックの流れを受け、プラスチックの代替素材としての紙製品が注目されており、新素材「セルロースナノファイバー」の開発など、最先端技術に触れる機会も増えています。
生活インフラを支えているという実感は、大きな自信に繋がります。
未経験者に対する手厚い教育体制
製紙工場の仕事は専門性が高いため、最初から全ての知識を持っている人はほとんどいません。
そのため、多くの企業が未経験者の採用に積極的で、教育プログラムを充実させています。入社後は半年から一年程度かけて、先輩社員と一緒に作業を行う「OJT」が基本です。
安全教育から機械の操作方法まで、段階を追って学べるため、工場勤務が初めての人でも安心してスタートできる環境が整っています。
高い給与水準と充実した福利厚生
製紙業界には歴史のある大手企業が多く、福利厚生が非常に手厚いのが特徴です。
また、交代制勤務には「深夜手当」や「交代勤務手当」がつくため、同年代の他の職種と比較しても月収が高くなりやすい傾向にあります。
賞与(ボーナス)も安定して支給される企業が多く、生活の基盤をしっかりと築くことができます。
社宅や独身寮、格安で利用できる食堂などが完備されていることも多く、可処分所得(自由に使えるお金)が増えるのも大きなメリットです。
一生モノの国家資格が取得できる
業務に必要な資格の取得を会社が全額負担でバックアップしてくれる制度が一般的です。
・フォークリフト運転技能者
・クレーン・デリック運転士
・ボイラー技士(1級・2級)
・危険物取扱者(乙種4類)
・公害防止管理者
これらの資格は製紙業界だけでなく、あらゆる製造業で重宝されます。働きながらスキルアップし、自分の市場価値を高めていけるのは、この仕事の醍醐味の一つです。
パルプ・製紙製造工場で働くデメリット
メリットがある反面、ライフスタイルによっては「避けたい」と感じるデメリットも存在します。
地方での生活が基本となる
製紙工場は、大量の水を使用し、巨大な製品を船やトラックで運搬するため、多くが海沿いや大きな河川の近くに立地しています。
そのため、勤務地は地方都市や郊外になることがほとんどです。「どうしても都会の真ん中で働きたい」という方には向きません。
逆に、地方で落ち着いて暮らしたい、自然豊かな環境で子育てをしたいという方には、これ以上ない環境と言えます。
突発的な呼び出しや残業の可能性
機械の故障や大きな断紙(紙切れ)トラブルが発生した場合、状況によっては残業が発生したり、非番の日でも緊急対応が必要になったりすることが稀にあります。
もちろん、法令を遵守した労務管理が行われていますが、プラント特有の「止めてはいけない」という使命感に伴うプレッシャーを感じる場面はあるかもしれません。
ルーチンワークへの飽き
日々の業務の多くは、監視や点検といったルーチンワークです。
変化に富んだ毎日や、クリエイティブな刺激を求める人にとっては、単調に感じてしまう可能性があります。
しかし、「決まったことを正確にこなすこと」に価値を見出せる人にとっては、ストレスの少ない働き方と言えるでしょう。
パルプ・製紙製造工場に向いている人の特徴
実際に現場で活躍している人たちの共通点から、どのような人が向いているのかをまとめました。
自己管理能力が高い人
交代勤務は体調を崩しやすいと言われますが、活躍している人は「夜勤明けの過ごし方」や「食事のタイミング」を自分なりにコントロールしています。
不規則な生活の中でも、しっかりと睡眠を確保し、健康を維持できる自己管理能力がある人は、長く安定して働けます。
チームでの協力作業を楽しめる人
巨大な紙のロールを扱う作業や、機械のトラブル対応は一人ではできません。声を掛け合い、息を合わせて動く必要があります。
スポーツのチームプレーのような連携が求められるため、仲間と協力して一つの目標を達成することに喜びを感じる人に向いています。
数字や機械の変化に敏感な人
抄紙機のオペレーターは、わずかな振動の変化や、モニター上の数字の変動からトラブルの予兆を察知します。
「いつもと何かが違う」という違和感に気づける細やかさがある人は、事故を未然に防ぐ優秀な技術者になれる素質があります。
ものづくりに対する「誇り」を持てる人
自分が携わった紙が、コンビニの棚に並んでいたり、大切な荷物を運ぶ箱になっていたりするのを目にする機会が多い仕事です。
人々の生活を支えているという実感に喜びを感じ、プライドを持って仕事に取り組める人は、環境の厳しさを乗り越えて成長していくことができます。
給与や年収の実態はどうなの?
気になる給与面についても触れておきましょう。
厚生労働省の統計や業界の求人傾向を見ると、製紙業界の年収は製造業の中でも平均より高水準にあります。
大手企業の正社員であれば、20代で400万円〜500万円、30代で550万円〜700万円程度を目指すことも十分に可能です。
これには、先ほど述べた「交代勤務手当」や「深夜割増」が大きく寄与しています。
また、残業代も1分単位で支給される企業が多く、働いた分だけしっかりと稼げる仕組みになっています。
昇給制度も安定しており、長く勤めるほど年収が上がっていく「年功序列型」の良さを残している企業が多いのも特徴です。
製紙工場への転職を成功させるためのポイント
未経験から製紙工場への転職を考えるなら、以下の準備をしておくと採用率が高まります。
「体力」と「意欲」を具体的にアピールする
面接では必ずと言っていいほど「体力的にきつい場面があるが大丈夫か」と聞かれます。
単に「大丈夫です」と答えるのではなく、「学生時代に運動部に所属していた」「前職でも立ち仕事を○年経験しており、体力には自信がある」といった具体的な根拠を伝えましょう。
また、なぜ他の工場ではなく「製紙」なのかという熱意も重要です。
交代制勤務に対する理解を示す
家族がいる場合は、交代制勤務になることへの家族の理解が得られていることを伝えましょう。
会社側は「生活リズムが合わずにすぐに辞めてしまうこと」を最も懸念しています。
事前にシミュレーションができていることを伝えると、安心感を与えられます。
安全に対する意識の高さを伝える
工場では何よりも「安全」が優先されます。
前職でのヒヤリハット経験や、ルールを守ることの重要性を理解しているエピソードがあれば、大きな評価ポイントになります。
慎重で真面目な性格は、製紙工場において最大の武器です。
キャリアパスと将来の展望
製紙工場に入社した後のキャリアはどうなるのでしょうか。
一般的には、まず現場のオペレーターとして数年間の経験を積みます。
その後、複数の工程を経験し、現場のリーダー(班長や職長)へと昇進していきます。
さらに経験を積めば、工場全体の稼働を管理する工務部門や、品質管理、生産計画といったデスクワークに近い管理職への道も開かれています。
また、技術を極めて「マイスター」のような専門職として現場を支え続ける道もあります。どの道に進むにしても、現場で培った「紙に対する感覚」や「機械操作のスキル」は、一生の財産となります。
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パルプ・製紙製造工場の仕事は、確かに「きつい」と言われる側面もありますが、それ以上に得られる安定感、給与、そして社会貢献度の高さが魅力です。
未経験からでも、巨大な機械を操るプロフェッショナルを目指せるチャンスが広がっています。
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