2021年施行の高年齢者雇用安定法の改定でできた継続雇用制度とは?

 

こんにちは!ヴェルサスのブログ担当です。

会社などを定年退職した後、一定期間雇用を保証する「継続雇用制度」があることをご存知でしょうか。

企業が雇用している高年齢者を、本人の希望に応じて定年後も継続して雇用する制度となります。

しかし、継続雇用制度となった場合の定年やパートの再雇用時の条件など、いくつかの注意点も存在します。

この記事では、継続雇用制度が何かに加えて対象者や労働条件などに付いて解説していきます。

継続雇用制度について知りたい方は参考にしてみてください。

 

 

■継続雇用制度とは何か

 

継続雇用制度は、2021年4月に施行された高年齢者雇用安定法の改正によってできたものです。

急速に高齢化が進行している日本では、高年齢者でも年金受給開始年齢までの期間、意欲と能力に応じて働ける環境の整備が必要と考えられたことが関係しています。

この継続雇用制度に関しては2種類あり、再雇用制度と勤務延長制度にわかれます。

 

 

・再雇用制度

 

再雇用制度は、定年後一度退職になったが新たに労働契約を結び直して働けるものです。

労働契約が一度切れているため、退職した時点で退職金が支払われます。

労働契約の見直しによって、雇用形態、勤務時間、給与形態などが変わり、お互いに負担のない労働条件に設定し直します。

しかし、このタイミングで大幅な給与の引き下げが行われると、同一労働同一賃金の原則違法とみなされるので注意しなければなりません。

再雇用制度の場合は、現在の定年制度を変える必要がないので企業側も導入しやすいでしょう。

 

 

・勤務延長制度

 

勤務延長制度は、従業員が定年になっても退職することなく雇用継続する制度です。

定年前の労働条件を引き継ぎ、定年のタイミングで退職金の支払いもありません。

定年前と変わらない役職と業務内容となるので、本人の希望で定年を引き上げる仕組みです。

しかし、企業側がこの条件を必ず受けなければならないことはありません。

つまり、企業側がこの条件で雇う必要はないのです。

雇用形態や勤務時間に関しては、従業員との話し合いによって変更になる可能性もあります。

また、勤務延長制度では定年後に勤務を延長した分の退職金が上乗されるものでもありません。

退職金自体、法律での取り決めがないので企業側独自の判断となります。

 

 

■継続雇用制度で対象となるのは?

 

継続雇用制度で対象となるのは、65歳までの勤務を希望している労働者全員です。

心身の故障、勤務態度の不良など除外理由がある者以外の希望者社員に適用されます。

これまで、労使協定によって定めた基準に基づき、継続雇用したい労働者の限定が認められていましたが、高年齢者雇用安定法の改正で現在は廃止されました。

この改正法施行前の2013年3月31日までに労使協定で継続雇用制度適用者を限定する基準を決めていた事業者の場合、2025年3月31日まで経過措置が利用できます。

継続雇用制度の経過措置は、以下の年齢に該当する者です。

 

【対象者】

・平成28年3月31日までは61歳以上

・平成31年3月31日までは62歳以上

・令和4年3月31日までは63歳以上

・令和7年3月31日までは64歳以上

 

上記の対象者には、継続雇用の対象者を限定する基準が適用されます。

この経過措置終了後は継続雇用の例外規定がなくなり、定年に達した65歳になるまでの労働者で希望者に対して継続雇用ができるのです。

 

 

■派遣やパートでも対象になる?

 

この制度で気になるのが、派遣やパートでも同じように対象になるかどうかという点です。

基本的に有期雇用労働者となるパートタイマー、直接雇用ではない派遣労働者の場合は継続雇用制度の対象外です。

そもそも、継続雇用制度は事業主が直接雇用している期間の定めがない労働者が対象になります。

パートの有期雇用労働者でも、ほとんど無期雇用と同じような雇用実態となっている場合は、無期雇用の労働者の定年と同じくらいに達した時に相談してみましょう。

事業者側も、できるだけ継続雇用とするのが望ましいです。

 

 

■継続雇用制度にした場合の労働条件はどのように変化する?

 

継続雇用制度にした場合、再雇用の際に労働者の条件を引き下げることができます。

その理由は、高年齢雇用安定法では労働条件について細かな規定を設けていないからです。

事業主が裁量の範囲で労働条件を決めた際に、定年退職者が納得しなかったことで継続した雇用にならなかったとしても法令違反にはなりません。

しかし、労働者に雇用を諦めさせたいという理由で不当な労働条件を提示した場合は不法行為に該当する恐れがあります。

明確な規定がないので難しい部分でもありますが、基本的には年齢に考慮した労働時間や賃金であることが求められ、再雇用で大幅な賃金の低下にならないような配慮が求められます。

例えば、再雇用後に勤務日数が減少する割合で給与の引き下げがあった場合、合理的な扱いであれば問題にはなりません。

ただし、雇用形態の変化によって正社員の時と待遇で不合理な差はパートタイム・有期雇用労働法8条違反です。

過去に再雇用後の賃金に関しての裁判もあり、一部労働条件の不合理という内容があったものの、手当や賞与に関しての支給は不合理ではないという結果になっています。

職務内容については、定年前と違う職務内容にすること自体に問題はないのですが、別の職種にするのは原則としてできません。

過去の裁判事例で、定年前は事務職だったものの再雇用の際に初歩的な清掃業務への従事を求めたことで違法と判断されて損害賠償命令が出たケースも存在します。

このように、継続雇用制度にした場合には労働条件が以前と大幅に変わる可能性があることを視野に入れておきましょう。

 

 

高年齢者の継続雇用は、他にも就業規則の変更、社会保険の手続き、年次有給休暇についてなど決めなければならないことがいくつもあります。

これによって雇用条件について気になる点が増えてくる方もいるでしょう。

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